「そうよ、わたしは聞きたいの。大妖怪の――人食いの話をね」
博麗霊夢と八雲紫。二人は出会い、奇妙な交遊関係を結ぶ。
過去を語らう陰惨な楽しみ。そしてそれがもたらす結末とは。
 

 「ゴールデンガール」 

 
スティーブン・キングの中編集をオマージュした「それぞれの四季」シリーズの最終巻でございます。
シリーズと言っても話は繋がっていないので、こちらだけでもお楽しみいただけます!
頒布価格:500円
ページ数:32P
文庫サイズ
2013/10/13東方紅楼夢、ヌ-06aにて初頒布
 
 
 
 
 

「ねえ紫」
 アルコールで頬を薄赤く火照らせながら、霊夢が呼びかける。
 「わたしね、感謝してるのよ」
 「あら、感謝されるようなことなんて何一つしていないけれど」
 「そんなことないわよ……あんな楽しいお話をたくさん聞かせてもらえて、そのせいで悪夢もたくさん見ちゃったけど――それとの付き合い方も教えてくれた。おかげでわたしはこの通り、健康体で大活躍の巫女様よ」
「はいはい、そう言ってもらえると語り手冥利に尽きるわ」
 酔いが回っているのか、どこか普段より素直な霊夢の言葉。冗談っぽく返しながらも、紫はその言葉に本物の喜びを感じていた。
 「ああ、少し飲みすぎちゃったかしら。泊まっていってもいい?」
 「ええ、わたしの胸の中で眠りなさい……だなんて」
 「そうさせてもらおうかしら」
 霊夢は紫に抱きつき、胸に顔を埋める。冗談のつもりだった紫は驚き、しかしすぐに嬉しくなって、顔を綻ばせる。
 「なんだかすごく……甘えたい気分なの、いいかしら……?」
 「まったく、本当に自分勝手で、仕方のない子ね……」
 紫が頭を撫でると、霊夢は甘ったるい声で鳴く。いつ頃からかは思い出せないが、紫はこの少女のことをたまらなく愛しい存在だと認識するようになっていた。

 
 
 
 
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